我々はメカニックの仕事をもっと理解すべきだ。

おはようございます。洞爺湖工場でウインチバンパーの磨きを行い色々と考える。鉄なので赤錆が付着している箇所が有る。次の工程ではサフェーサーを塗り表面を均一にし、本塗装の付着を馴染ませるのだ。しかし赤錆はなかなか落ちない。どの程度まで落とせば良いのか。表面を落とせば良いのか。全てを落とせば良いのか。自分との戦いが始まった。専用工具を使えば落ちると素人は考える。しかし結果として簡単には落ちないのだ。

この赤錆を落とす。色々と試して手で磨いて落とすのが間違い無いと理解する。ベテランメカニックが様子を見にやってくる。どうだい。サビは頑固ですね。我々は毎日こんな仕事をしている。気が長いタイプは向かないよ。同じ事を繰り返す。気が短いタイプは色々と試して、早く仕事を終わらそうと工夫をするんだ。何事も創意工夫が問われるのだ。

表面に染み込んだ赤錆は簡単には落ちない。ヤスリの番手を変えて試す。結論は根気と工夫なのだ。赤錆が残ればまた赤錆が侵食するだろうなと考える。赤錆の上に塗装をしても、錆は何事も無かったように生き続ける。そして鉄は徐々に腐食するのだ。

私は目に見える赤錆を取ると決めた。5時間掛けて手で磨き表面の赤錆を削り落とす。しかし完全に除去は出来ないと考える。この作業の労力は大変だった。両手の指先に力を込めて磨く。ほぼ全身運動なのだ。私は磨きながら色々と考えた。我々客は簡単に作業を依頼して、言われた工賃を支払う。我々はモノを大切に扱う気持ちに欠けてはいないか。日々のメンテナンスを真剣に行っているのか。我々はクルマの主治医に対する感謝の気持ちを忘れてはいないか。主治医は手間と労力を使い我々の愛車を維持管理してくれている。金を払えば全て終了と考えるのは如何なものか。長い編集者人生では、企画を考え実行する事に喜びと生き甲斐を求めた。しかし編集者生活引退がもう少しで訪れる。これからは積極的に自分の手でクラシックを触ろうと決めた。5時間掛けて落とした赤錆。これからは時間は十分有る。手間を掛け納得するまでクラシックを仕上げたい。編集者生活引退後のテーマが明確になった。次々とリペアする箇所が頭に浮かんでくるのだ。